前エントリー「創造力育成。つくるちからをそだてる」が大目標。それを達成のために図工ランドで大切にしているポリシーを,これから紹介して行きます。
一番目は
「手で考える」-アイディエーション(ideation)です。
プロのデザインの現場では,アイデアを出すとき,最初にスケッチをどんどん描きます。描いてみて,ダメなものは捨て,可能性のあるものを残して,さらにバージョンアップして行く。そのプロセスを通してデザインやコンセプトを明確にして行きます。
私の専門である建築設計でも,設計の最初は敷地図面の上に, トレーシング・ぺーパーを置いて鉛筆で線を描いては,消して,上書きして・・と形にして行きます。
このようなアイデアを明確にしていくプロセスをアイディエーション(ideation)と言います。
一言おことわりを入れますが,「手で考える」は図工ランドオリジナルではありません。カントが「手は第二の脳である」と語った。とか,他にもネットで検索すれば沢山出てくる考え方です。
しかし,上で述べたように,私が居たクリエイティブの世界でアイデアを出すときのルーティーンであり,良いやり方であると実感しているので,是非子ども達にも体得してもらいたいと考えています。
図工ランドの教室で子ども達によく言っているのは,とにかく手を動かしてごらん,ということです。じっと固まって頭の中だけでぐるぐると考えを動かしていると,堂々巡りになってしまいます。そんなとき,とりあえずできることを何かをしてみる。例えば絵の具を溶いてみる,材料をさわったり,動かしてみる,切ってみる,曲げてみるなどの動きによって,考えがある方向に流れ,形になって行くきっかけがつかめます。
図工ランドでは平面系の課題では,「お試し紙」という小さい画用紙を配っています。これもちょっとしたアイデアを描いて,本番の制作への導入とするものです。たまに,このお試し紙に描くことに夢中になって,肝心な制作に入ることを忘れてしまう子が居ます。そんなときは,そろそろ本番にはいろう,と声かけをすることもあります(笑)。
●絵を描く技術や色彩感覚,造形力を養うことも大事ですが,それらの根っこにある,生きていく上での力として,手(=身体性)と頭の連携や協調を獲得して,アイデアを生み出す手法を身につけてほしいと考えます。それが「手で考える」です。
—手で考える=アイデアをかきとめた簡単な絵というと,思いだすのが,巨匠といわれる建築家のスケッチです。あり合わせの紙に描いた殴り描きのようなスケッチなど,その後出来上がった壮大な建築のエキスといったようなものが描かれていて,作家はこれをやりたかったのかと納得します。下に安藤忠雄さんのスケッチを参考に出させていただきます(著作権に触れるものなのか,わかりません・・問題があれば指摘して下さい,取り下げます)。