色にまつわるルールを実際の作品づくりに活かしたり,抽象的パターンに子どもらしい具象的な要素を入れた平面の構成など。ゲーム感覚で,平面におけるモダンデザインの基本作法を身につけることをねらいとしています。
色彩の理解を深めたり、色や形の構成演習をしたり、平面的な造形の基礎となる力をつけようというカテゴリーです。デザイン系の場合、受験の際にイヤというほど平面構成をしてきていることが多く、講師たちの中にも「受験時代を思い出す〜」と昔のトラウマがよみがえる人もあります。こどもたちはどうかというと、遊びのように気軽に取り組めて、高学年女子の中には「こういうの好き」と言ってくれる子たちもあるものの、全体にテンションが低めの課題です。
とはいえ,保護者には受けが良いようで,たまには是非やってほしいという要望のあるカテゴリーです。図工ランドとしては、不人気をどうやって克服すべきか、毎回苦心するカテゴリーでもあります。
さて、その最たるものが「色相環」です。
図工ランドではこれまでの年月、何種類もの色相環を作ってきました。そして左上のものが、2020年、ついにここまでたどりついたというシンプルな形です。過去には左下の写真のような、色相環を立体にした「図工ランド式色立体」などもやりましたが、作るのがたいへんな割に楽しくないので、こどもたちには冷ややかに受け止められました。左上のシンプルな色相環は、赤青黄の三原色だけを使っています。はじめに三原色をそれぞれの場所に塗り、間は両側の色を混ぜて作ります。自分の眼だけをたよりに、黄色に近い黄緑と青に近い緑を作り分けていく作業です。みんなの大好きな虹の色は、こうやって作れるし、この順番に並んでいるんだよ、ということをわかってもらうのが、ねらいのひとつです。そして環ができたら、最後に赤青黄の3色を良い感じに混ぜると黒ができますので、中央に塗ってできあがり。この黒を作るのはちょっと難しいのですが、ご紹介する小4男子の作品は、中央の黒もしっかり作れています。小さい子たちは厳密でなくても、混色の感覚をつかむ練習として、取り組んでもらいます。
色相環ができると大人たちはおおいに感心し、眼を細めるわけですが、こどもたちにとっては特に楽しい作業でもないので、そのあとは、気軽に取り組める塗り絵を用意しました。このときは日本の伝統紋様をいくつか用意して、ここでは白も使って、自由に好きな配色をつくります。みんな3色+白だけで豊かに色を作っていますね。色相環は一度つくれば理解できますので、この課題はかなり時間を置いて実施しています。
さて、このカテゴリーの中心となるのは、平面構成になります。色や形の組み合わせを作りながら、美しいものや好きな色や形についての感覚を、自分の中から掘り起こしていこうという課題です。図工ランドでは様々な手法や切り口で、取り組んできました。
まず下は絵の具を使った平面構成。円と線を使って自由に構成します。塗り分けがしやすいように、形はクレヨンで区切っています。コンセプトを持って取り組む子もいれば、自由に形や色と遊んでいる子もあります。それぞれにおおこんな色が好きなんだ、こんなくふうをしたんだ、と普段のおえかきとはまた違った一面を見られる楽しさがあります。
下の課題では色紙を使って、自分で設定した言葉のイメージを表現する構成をしました。「弱い」「強い」、「寒い」「暑い」など、小さい子でもちゃんと色や形のイメージを理解し、自分なりの表現をすることができています。
さて下の課題はさらに難しいお題、「動きを表現する」でした。これは大人でも相当難しいのでは。でもここにあげたように、こどもたちは具象と抽象を自由に行き来しながら、自分の実感に基づいた構成をたくさん作ることができています。自然の木や風の動き、転がる球の動き、渦巻きなどなど、いろいろな動きがみられます。
色をテーマにすることも多いこのカテゴリーですが、逆にそれ以外の要素にしぼって取り組んでみる課題もあります。下はモノクロおえかき。ひとつの色の明度の差だけで描いていくことをやりました。そもそも白黒写真など知らない世代の子たちにとっては、なんでそんなことするの??という課題だったようですが、不思議と味のある作品ができあがっています。
さらにおもしろかったのは、グラフィックデザインクラスの課題を本科にもってきた下の課題です。こちらは白と黒の紙だけを使いました。切った形と残った形の両方を使って構成する、というレベルの高い内容。グラフィックデザインクラスのデビッド・マシュー講師が、カリフォルニア造形大学で経験したカリキュラムの中から出題してくれました。大人の場合だと、どう料理しようと頭をひねって手が動かなくなりそうですが、こどもたちは奔放に手を動かして、いろいろな展開が生まれています。ハサミを使うのも大好きですので、チョキチョキと切ったり並べたり(一部はどこかに飛んでしまったり)しながら楽しみました。
このカテゴリーでは毎回何らかのルールや制約があって、その中で何をするかを問われる点が、ゲームの感覚に近いと思います。こどもたちが楽しめる課題で、おもしろがってどんどん作っていくうちに力をつけていけるような、そんな課題をこれからも開発し、磨いていきたいと思う図工ランドです。