子どもの視点で,建物や環境をデザインをするカテゴリーです。「まめ吉くん」は図工ランドのモデュロールです
建築・環境デザインの事務所を母体とする図工ランドならではのカテゴリーです。ランド長の建築家としてのノウハウを投入しています。
「空間のデザイン」はわかりやすいテーマですが,子どもたちでも取り組めるような様々な工夫をしています。代表的なものをあげると「まめ吉くん」という図工ランドのキャラクターともなっている人形です。これは,緩衝材に手足と顔を描いたもので,子どもでも短時間で簡単に作ることができます。建築家のル・コルビジェは人体の寸法と黄金比から作った建造物の基準寸法をつくり,モデュロールと呼びました。ル・コルビジェ大先生と比較することは畏れ多いことですが,「まめ吉君」は図工ランドのモデュロールと考えています。まめ吉君を登場させることで,子どもでもスケールを感覚的に規定することができます。まめ吉君が入れる空間の大きさは?家具などの大きさはどれくらい?ということです。また,誰が使うのか,建物や環境をデザインするには使う人のことを想定することが大事であると考えています。まめ吉君が入ることで,空間が生き生きとしてきます。
課題をいくつか紹介します。
「私の家」:白い「切妻屋根」のシンプルな家型と「敷地」であるダンボールを用意して,「戸建て住宅」をデザインする課題です。子どもが描く「家」のイメージをそのまま立体にした家の原型のつもりですが,マンション住まいが多い都会の子ども達にとってはたして戸建ての家が考えられるのか心配していましたが杞憂でした。モダンな外観の建物に,植栽と遊具のある庭があるという素直な家から,渋い和風の家。基本形に円筒形など別の要素を付加した建築家が設計したような家,開口部のデザインも凝っています。さらに,出題側ではあえて要求していなかった内部空間にこだわりをもった作品等等・・他にもここに紹介しきれない様々なアプローチがみられました。子どもでも住宅にかなりの知識とこだわりがあります。
「間取り」:いわゆる間取りを考える課題ですが,同じ幅の壁を立ち上げて,立体的にしています。用途は住宅に限りません。ドアや窓もつくり,各部屋や外部空間とのつながりも考えてもらいました。さらに立体の家具や床や壁を表現することで,インテリアデザインにまで落とし込みます。この課題は「私の家」よりスケールを大きくするために,「まめ吉くん」より小さい「ミニ吉くん」というモデュールを使いました。写真のようにそれぞれバラエティに富んだ空間構成で,細かい生活イメージまで表現された作品が出来上がりました。
「箱の家」:ケーキの箱を並べたり,重ねたりして住宅をつくる課題です。ユニットシステムのプレハブ住宅と同じ構造です。ケーキの箱は持ち手があるものと,無いものの2種類あり,どこに使うかも考えどころです。内部を切り開いてインテリアも作り込んでもらいました。2階,3階建ては階段やはしご,ネットなどで行き来できるようにしています。屋上庭園があったり,店舗がついていたりと様々なアイデアがありました。
「ツリーハウス」:秘密基地をつくろうと,子どもたちの目の輝きが違った課題です。らせん階段や縄ばしご,エレベータ,すべり台など,垂直動線をどう作るかが考えどころ。ハウスというよりアスレチックのような場所が多くみられました。夢中になって作ってくれれば,何でもありです。まめ吉たちも楽しそうです。
「ゲート」:結界をデザインする環境デザインの課題です。ここから先は違う場所で,その顔=象徴のデザインです。オレンジ色の棒状のスポンジ(建材)をメインの材料として提供しました。抽象度の高いことを考える必要がありますが,子どもたちは想像以上についてきてくれました。自分で設定したテーマとそれを象徴するアイテムやモチーフ,メイン材料であるオレンジ棒の構成の仕方がなるほどというモノばかりでした。
「割りばし建築」:木造の建物をつくる課題です。副材料の紙は基礎や梁,床,屋根など,割りばしだけではできない建築要素もつくることができます。紙は厚紙ではなく,あえて曲がる普通の画用紙を使っています。割りばしとどのように組み合わせて使えばしっかりするか考えなければなりません。割りばしもどのように組み合わせると強くなるのか,建築の構造力学をつくりながらわかってもらえれば・・とのねらいがあります。とはいえ,子どもの工作ですので,多少構造が弱くても形や空間の面白さができれば良しとする課題です。
「小さな星」:サンテクジュペリの「星の王子様」にヒントを得た課題です。小さな星全体をデザインしてもらいました。スケールは自由です。水と緑の星,星自体が生命体のような星,楽しそうな星,黒くて不気味な星・・・神様の視点からある星の営みを見るような,不思議な感覚になります。子どもたちの様々な世界観が表現されました。