けんちくクラスひさしぶりのエントリーです。2021年6月17日から開催された第13回図工ランド展の建築クラス展示をレポートします。建築クラスは8名の作品を展示しました。見応えのある建築模型が展示されていて,子どもから大人まで人気上々。詳しく見て下さる方を多く見かけました。
今回は
A)人と人の心が通じ合う空間のデザイン
B)展示の建物のデザイン
C)日本の建築家をリスペクトする
3つの課題の展示でした。1人1〜2点展示しています。以下各人の作品を見て行きます。
A)人と人の心が通じ合う空間のデザイン
場所や用途など条件は自由です。さまざまな種類の建物や屋外施設,個性的な表現の作品が出来上がりました。
↑T君(小6)は図書館です。大木の枝にまとわりつくように書架や閲覧スペースがあります。木というシンボリックなものの周りに人びとが集う設定。さらに木の下で本を読む思索的空間を想像させるとともに,成長するという意味をも感じさせる素晴らしいアイデアです。
↑Kさん(小5)は公園です。環境デザインに興味をもって選ぶところがユニークです。都市(まち)の中という設定です。自分で3つのゾーンと水環境,機能を設定し,それぞれの場における人びとの振る舞いを考えて,それにふさわしいきめ細かなデザインをしています。写真ではわかりにくいのですが,模型材料の選定や形へのこだわり,細部まで気持ちが入った作品になりました。
↑K君(小4)は自給自足の住宅です。将来自分で住みたい家だそうです。家族や動物が集う、スローでほのぼのとした生活が感じられる、ほほえましい作品になりました。小4でSDGsをテーマとして,それを具体的形につくりあげているところは素晴らしいです。パネルも素敵な仕上がりです。
↑N君(小5)は体育館,劇場,図書館などが入った複合施設です。大学生の課題のような真面目なとりくみです。ぐいぐいと模型を作りながら形を決めていった,正当派の造形力にあふれたデザインです。トップライトや大きな開口部による開放的な空間が魅力です。
↑Nさん妹(中1)はカフェです。ガラス面を大きくとり、内外にいる人がお互いに視線を交わすことができる工夫です。この人はインテリアデザインに興味があるので、家具レベルまで作り込んであります。
B)展示の建物のデザイン
自分で展示のテーマを決めて,それにふさわしい建築デザインをする課題です。
↑O君(小6)は「お金」をテーマとした博物館です。この人はいつも,広告代理店的な面白い企画を提案してくれます。1番目の写真は全体模型です。100円玉をかたどっているそうです。屋根をはずして中が見えるようにしていますが,スロープを降りて展示室にはいる空間構成です。2番目の写真は展示のクローズアップですが,各種おもしろ展示を考えています。
↑Aさん(小4)は「フクロウ」の展示施設です。大きな木を中心にしたドーム型の形となっています。別棟はショップだそうです。本物のフクロウも飼っているという設定で,細かな展示アイテムまで模型が作り込まれています。パネルも建物にあわせた雰囲気の仕上がりになっています。
↑Nさん姉(高校)は美術館です。水の上にある展示室や,草の上にある展示室など工夫がされています。壁や階段・導入路で各展示室ごとに区切り,観覧者の気分を変える細かい演出をしています。
C)日本の建築家をリスペクトする
この課題は15人程度の日本の建築家をパワポで紹介したあと,気になった作家さんと作品を選んでもらい,その作品をリスペクトした建物のデザインをするという課題です。元の作品にはこだわらず,自分なりのアレンジをしてもらいました。
↑Nさん妹(中1)は石上純也氏の神奈川工科大学KAIT広場をリスペクトした作品です。独特のうねった全体のフォルムをなぞらえていますが,内部空間は石上氏の作品にはない植栽や土的な要素に置き換えて,エコな雰囲気に仕上げています。屋根に空いた大小の穴からの光の効果を模型を作りながら確かめていました。
↑Kさん(小5)は妹島和世氏の一連の作品をリスペクトした住宅です。妹島氏の様々な要素を自分なりに消化して,カフェつき4階建ての住宅として構成しています。各階ごとにデザインが異なるファサードだけでなく,建築としても十分成立しています。ずらした平面により,バルコニー,軒下など豊かな空間を巧みに生み出しています。
↑N君(小5)は黒川紀章氏の新国立美術館等の円錐などの要素をリスペクトした作品です。クリスタルな材料で黒川氏のダイナミックな幾何学形態の要素を採り入れた造型にしています。周りを自然の要素で作り込むことにより,彫刻作品のような演出になっています。
↑T君(小6)は藤本壮介氏のモンペリエの集合住宅,ハウスNATをリスペクトした作品です。壁やバルコニーを上下階でランダムにずらしたり,薄い床版や細い柱で構成したり,藤本氏の作品の特徴をとらえています。
↑O君(小6)は藤森照信氏のツリーハウスをリスペクトした作品です。内容ははじけて,面白建築になっています,藤森氏の飛び抜けた発想力にも通じるものがあります。パネルには模型で表現しきれない,面白アイデアが満載,この企画力は今後「何かに」活かされるだろうと感じさせます。
まとめ
けんちくクラスは小4〜小6程度を対象としています。この展示で紹介した作品のように,与えられたテーマから「自分なりにストーリーを考えて」「形にする」それを「模型やパネルで表現する」ということを目標にしています。
生徒さんは、答えの無いむずかしい課題に真剣に取り組んでくれています。出てきた独創的な発想力やデザインにはいつも驚かされます。このまま建築への情熱を持ち続けて、将来建築の道に進んでもらってもよし、別の道に進むにしても、ここで培った経験は必ず役に立つと考えています。
(ランド長 木村明彦)